2022年5月16日:蠍座の満月リーディング by すずきふみよし
蠍座の満月ホロスコープ|2022年5月16日13時14分(東京)
満月図の概観
⇒クリックして天体配置の詳細を読む(占星術に詳しい方向け)
満月=太陽と月のオポジションが,太陽:9室牡牛,月:3室蠍で形成されます。
このオポジションに対し,土星(およびベスタ,バーテックス)が90度でTスクエア,火星と海王星の合が60度・120度でいわゆる調停のアスペクトをとっています。
アセンダントは乙女(20度)でそのルーラー水星は9室双子にありますが,主要天体とのアスペクトがありません。またドミサイルですがディスポジター上では孤立しています。
そのディスポジターは7室海王星が根になっており,太陽は金星(8室牡羊)を介し,木星(7室牡羊)は火星(7室)を介して海王星に行き着きます。火星は海王星と合ですからここのハブが強化されています。月はかなり遠回りしてやはり金星を介したルートになります。
その他特徴的な配置として
- アングル軸がグランドクロス,南~西半球強調型
- MCにリリス(月の遠地点)
- 今回の満月は月蝕
などがあります。
満月図解説
満月(太陽と月)のサビアンシンボルを見てみましょう。
まずは、太陽のほうから。
満月|太陽:牡牛座26度のサビアンシンボル(ルディア版,以下同)
牡牛座26度
スペイン人の伊達男が恋人にセレナーデを歌って聴かせる
A Spanish gallant serenades his beloved.
なんともロマンティックな絵図ですが,基本に愛があるのは間違いないとして,この度数の本質的な意味合いは集団の価値観に根ざした個人の価値観を確立することにあります。
セレナーデは日本語では「小夜曲」などとされますが,その音楽的起源は紀元前の古代ギリシアに遡り,そこから欧州各地へと伝播するなかで個別の発展を遂げてきました。
恋人に愛を語るというごく個人的な営みのなかに民族的あるいは文化的な背景があるということを自覚する——つまり自分のルーツがどこにあるのかに関して意識的になっていくという度数です。
このシンボルではスペインが舞台になっていますが,今日的にはヒップホップにおいてラッパーが言うところの「レペゼン represent」がわかりやすいでしょう。「俺はどこそこ生まれでそこを代表する者だ」という自己紹介です。フーテンの寅さんのような香具師やヤクザ映画での博徒などが仁義を切るのも同様です。
ルディアは「個人の欲望の儀式化」というキーノートを付しています。愛を語るにも手順や様式に即して行うことが不可欠であり,それを培っているのは自分が帰属する文化であるということです。
キーワードとして “CONSTANCY(不変性,安定性,忠誠)” が与えられています。自分のルーツをしっかりと見出し,帰属意識に基づいたアイデンティティを確立すること,そしてその確固たる変わらなさがここにあります。
またこの度数のポジティヴな発現は “それによって人間の意志が魂の深みを体験へとうまくかたちにする継続的な再保証” であり,確立されたアイデンティティはその人の魂をより具体的にかたちにして表現してみせる手助けとなります。歌に魂がこめられるのです。
この度数のネガティヴな発現は “空虚なお世辞で人生をコントロールしようとする無益な試み” です。魂も心もこもっていない上っ面だけの言葉をペラペラと並べ立て,それで世の中をうまく渡っていけてしまうという方向へと転じる可能性もある度数なのです。使い方をどうするか,そしてどういう人生を選び歩むかは当人次第です。
満月|月:蠍座26度のサビアンシンボル
蠍座26度
新しい領地へ移ったあとキャンプをするアメリカインディアン
American Indians making camp after moving into a new territory.
セレナーデを歌うスペイン人の伊達男とは一見対照的な絵図が浮かびますが,帰属意識に基づいたアイデンティティという点は共通しているのがわかるかとおもいます。アメリカインディアンにももちろん固有の文化がありますが,ここで両者の違いとして見えてくるのは環境の変化への対応能力です。
ルディアは「必要条件に波長をあわせることによって,新しい状況に迅速に適応する能力」というキーノートを付しています。むしろこの蠍26度においては,自分を活性化させるために,あるいは生存戦略として,みずから変化を求めている感があります。
またルディアは「自然との調和のなかに生き,新しい必要が立ち上がるに連れて動く人は,どこでも自分がくつろいでいられることを見出す。彼は人生に要求をしない。というのも彼は生物圏の大きなリズムに自分を重ね合わせ,それらが生み出すものとともに平和に機能するからである」とも述べています。つまり,変化のなかで自然のリズムに同調し “自己確立への,そして必要とするあらゆるものを直ちに手近に見つけることへの無尽蔵の能力” を発揮するというのがこの度数です。
キーワードとして“EXTEMPORIZATION(即興)”が与えられています。変化への対応には、まさに即興性が必要ですが,経験の蓄積があってこそ即興は成立します。アメリカインディアンは自然のなかで生き抜くための知恵を部族全体で共有しています。そういう文化的価値観が背景にあり,それらをもとにして当意即妙な対応を見せていくというのがこの度数の意味合いです。
この度数のポジティヴな発現は “普通でない機知の豊かさ、および最も見込みのない状況下で本当の機会を見つける天賦の才” です。即興的な対応にも並外れたひらめきが伴い,またよっぽどヤバいとおもわれる場合でもおのずと活路を開くことができる天才的な能力を示します。しかしながらネガティヴな発現は “ものごとをあるがままに野心なく受容すること” です。これは文字どおりに受け止めれば虚心坦懐なオープンマインドに読めますが,アメリカインディアンが西洋人にどんな仕打ちを受けたかをかんがえてみてください。
サビアンシンボルを踏まえた満月読み
私はかねて、満月とはソーシャルな立場(太陽)とプライベートな充足(月)との緊
ソーシャル面
かかわっているものごとに見落としはないかを確認してみるとよいでしょう。プレゼン予定の書類に不備はないか,締切は忘れていないかなどをチェックしてみましょう。あるいはすでに提出したものに漏れが見つかったりするかも知れません。また,たとえビジネスメールであっても,あまりに事務的になりすぎていないかなど,自分の心構えを振り返ってみるのも必要でしょう。
プライベート面
落ち着きのない感じが現れるかも知れません。自分を取り巻く状況がやたらと退屈でつまらないものに見えてきたり,ここにいてもよいのかどうか自分の居場所が疑わしくおもえてくる可能性があります。
所在なさげな気持ちをどのように解消するかは人それぞれですが,自分の知っている・できる範囲内で気分転換や刺激を採り入れてみてください。
蠍26度のサビアンシンボルの字面どおり、移動に関することに親和性がありますが,必ずしもアウトドアではなくても構いません。月が3室ということから、身内やローカルな間柄の親睦さが感じられますので、そういう楽しみを見つけてみましょう。あるいは読書を通じて内面を掘り下げる,または異世界や異文化に想いを馳せるといったこともよいとおもいます。
アスペクト他、注目すべき点
満月に対して土星およびベスタ,バーテックスが90度でTスクエアです。
かなり義務感の強い配置です。やるべきことのなかであちらを立てればこちらが立たずといった感じに巻き込まれるやも知れません。読書どころではないとしてもバランスを失わないようにお気をつけください。
火星と海王星の合が60度・120度で調停のアスペクトをとっています。
これは非常に有効活用できる配置です。セレナーデの字面どおり音楽に適性がありますので,そのへんでの楽しみが期待できます。飲酒にも親和性がありますので飲める方は大いにストレス発散を。一挙両得にカラオケなどもよいとおもいますが,時節柄「ひとカラ」のほうが望ましいかも知れません。
アングルが柔軟宮グランドクロスをなしています。
自己の確立が今回の満月のテーマですが,どことなく優柔不断なムードもつきまといます。そのくせ意固地にも見えます。満月は収穫でもありますから,成果が出たものと出ていないものとを仕分けして見切りをつけることも必要でしょう。
金星とカイロンの合(8室牡羊)が天王星(9室牡牛)と30度です。
カイロンは厳密には7室ですが、カスプに近いので8室と捉えてよいでしょう。秘密の楽しみが精神に変化をもたらします。
しかしながら、MCにリリスが載っています。
性的な事柄は悪目立ちしそうですのでご注意を。“発覚”の暗示も感じられます。またそれは煮え切らない態度から表に噴出することになるかも知れません。
月蝕について
前回の新月は日蝕を伴っていましたが,今回の満月は月蝕です。
⇒日蝕・月蝕とは? クリックして詳細を読む(占星術を勉強している方向け)
蝕は占星術上ではノード(ドラゴンヘッド/テール)と太陽・月が近い状態を表しています。
ノード node とは結節を意味する言葉ですが,この場合は黄道(太陽の軌道)と白道(月の軌道)の交点のことです。この交点に近いところで太陽と月が合または衝(オポジション)となったとき,どちらかが欠けて見えるというわけです。
今回は衝であり,地球を挟んで太陽と月が一列に並ぶ格好です。交点に近いところで並んでいるため,太陽に照らされた地球の影が月に映る——これが月蝕です。ちなみに日蝕は太陽-月-地球という並びの一列で,太陽の光による月の影が地球に落ちている状態です。
一般的な占星術は天動説の時代に地球から見た星の運行をもとにして体系化されましたので,これをジオセントリック(geocentric=地球中心)と呼びます。
しかし近代の科学はどうやら太陽を中心とした太陽系というシステムがあるようだということを明らかにしましたので,これに基づいたホロスコープのつくり方(ヘリオセントリック;heriocentric=太陽中心)も存在します。ヘリオセントリック・チャートには太陽も月もなく,逆に地球があります。
月蝕という天文現象一つを見るにしても占星術によってさまざまな解釈がありますが,少なくとも“月が欠けているのは地球の影のためである”という視点をもつと見方が変わってくるかも知れません。ヘリオセントリックのように根本的に捉え方を変えるまでもなく,です。
太陽は個人のパーソナリティのソーシャルな側面を,月はプライベートな側面を表すのだという話を私はいつもしておりますが,一方でこうもおもったりします。「もっと別の部分はないのか」と。
それは占星術では他の天体が扱うものだったりしますが,そうした象徴化の枠外にあらかじめ存在するものがあるようにも感じています。月蝕はそれを想起させます。なぜなら地球の影というかたちで可視化される天文現象がほかにあまりないからです。
強いて言えば,〈夜〉というのが地球の影です。太陽に照らされている部分が昼であり,影になっている部分が夜です。しかし私たちはそのことを日常生活のなかであまり意識しません。一方で人類は〈夜〉というものに数多くのイメージを与えてきました。それらを総合して端的に言えば,人間の暗部です。月蝕とはこれを非日常的な天文現象としてわれわれに示し,気づかせてくれるものであるようにかんがえています。占星術家はそれを踏まえて月蝕の意味を取り扱う必要があるとおもいます。
前回のメルマガにおいては日蝕の意味として王権の失墜という解釈をご紹介しました。これに準ずるかたちで月蝕の意味を提示するとしたら,理論上は「個人のアイデンティティに翳りが差す」ということになります。つまり人間の暗部,得体の知れないなにかが個人のなかで湧き起こり,自分の存在がぐらつきかねないような事態が起こるかも知れない——これが月蝕の意味するところの1つです。
しかしながら幸いにも、今回の満月のサビアンシンボルは自己の確立がテーマである度数であるがゆえ,そのようなぐらつきを通じて自分自身を再強化していくような機会になればとおもっております。
下弦図で見る、5月23日から次新月(5月30日)までの動き
下弦図|2022年5月23日3時43分(東京)
下弦の月(5月23日)を境に少し状況が変わってきます。
双子座2度
暖炉の前に吊るされた靴下をこっそりといっぱいにするサンタクロース
Santa Claus furtively filling stockings hanging in front of the fireplace.
キーノート:スピリチュアルな祝福として報いられた信仰魚座2度
ハンターから身を隠すリス
A squirrel hiding from hunters.
キーノート:将来の必要最低限の生活を保証することおよび攻撃的な社会の要因から自身を保護すること双方の個人にとっての必要性
太陽は1室で華々しくアクティヴですが11室の月とスクエア。
自己主張が阻害されおもうようにいかなかったり,気が萎えることも多くなってくるかも知れません。
太陽がある双子座2度のサビアンシンボルは福々しいものですが,よくもわるくも消費傾向が高まります。また自分が享受している恩恵はいったいどこから来ているのか,なにによるものなのかについて,意識が及ばない,あるいはそもそも目を向けもしなければそれでよいのだとさえおもってしまう負の側面を秘めています。
一方で月のサビアンシンボル魚座2度は未来志向の観点から自らの保身をかんがえる度数です。
この太陽と月、2つの価値観が軋轢を起こします。いまのままではいられない,この幸せはタダではない,自分の安全保障のために将来に向けてなにか策を講じなければ,という必然が生じてくるでしょう。
ただし月は11室ということから,それは他人と相談したり共有することで実現されるものになってくるはずです。11室には魚座がまるごと入ってしまっているインターセプト状態ですのでとっかかりが難しいかも知れませんが,できるだけ他人とのコミュニケーションを図ってみてください。
アセンダント牡牛座のルーラー金星は12室牡羊座で,土星(10室水瓶座)と60度です。
そのミッドポイントに海王星(11室魚座)があります。
衝動をうまくコントロールできる一方で情にほだされやすかったり,気分のムラも見られてきます。未来志向のはずなのに消費が浪費にさえ向かう可能性があります。落としどころを見つけましょう。
MCに冥王星が載り,火星(11室魚座)と60度です。
前回のメルマガで5月9日の上弦で潮目が変わると述べましたが,この5月9日とはロシアの戦勝記念日であり,国際社会に大きな動き(外部サイト:NHKの記事)が見られました。
今回も冥王星の破壊力が強烈な重さとなって火星の武力に〈調和的〉に結びついています。軍事行動になにがしかの変化が現れると予想されます。
次回、5月30日の新月リーディングは、新月時に公開します。
⇒新月・満月メルマガに登録して新月前日に読む
執筆者 【すずきふみよし プロフィール】
メールマガジン『新月に読み解く! 星からのメッセージ』
この新月読みは、新月メルマガのホンの一部です。
第三の眼のメルマガに登録すると、毎月、新月と満月の前日に、最新版の新月or満月読みと、お店の最新情報、メンバーコラム等が届きます。
メルマガ購読者特典もあります。
こちらから登録いただけます。