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2023/04/12
「喫茶去 - お茶をどうぞ-」 生活に生きる哲学
こんにちは! 北海道(函館)支部&オンラインで、心理占星術師コンサルテーションをしている夕雅です。
高校時代から18年程、茶道を習っていました。
高校の茶道部で先生と出会い、お人柄に惹かれ、
茶道を通じて所作や心のあり方を教えて頂きました。
『禅』は茶道を通して出会い、その思想に強く惹かれました。
タイトルの「喫煙去(きっさこ)」は禅語で、
お茶をどうぞ召し上がれ、という意味です。
私にとって生活に生きる「哲学」として、禅を実感できたのが
茶道でした。
自然と共にあること
お稽古の前に、まず、床の間の掛け軸と先生が生けられたお花を拝見します。
掛け軸は禅語が主で、季節のお花との共演が素敵でした。
特に初夏から秋にかけ、先生のお庭に咲いている茶花が見られる
この時期がとても好きでしたね。
先生はお稽古の度に茶室に季節感を表現し、お道具にも趣向を凝らし、
私たちを楽しませてくれました。
例えば、1996年6月12日のメモには
お軸 「彩雲 ~さいうん~ 」
お花 タイツリソウ、ウノハナ
8月17日は、
お軸 「白雲抱幽石 ~白雲、幽石を抱く~」
お花 葛、紫(おそらく萩?…)
花入れ 虫籠
8月のお花について名前を先生に確認すればよかったのですが、
メモに書かれたイラストを見ると紫の花は萩かと思われます。
萩であるなら、葛と萩で秋の七草となります。
17日は立秋やお盆が過ぎた頃。
私たちに秋を伝えてくれたのでしょうか。
6月のお軸の「彩雲」のメモには、おめでたい時に掛ける軸との添え書きも。
この頃、札幌ではお祭りが立て続けにあります (この時は札幌在住でした)。
また、この年の春、夏には茶道仲間と私の結婚が続きました。
そのため掛けられたのでしょうか。
8月の「白雲抱幽石」は、山の奥深くにそそり立つ
荘厳な巨石を包み込むように、
ふんわりと浮かぶ白く大きな雲が想像されます。
この風景は暑い時期に清涼感を与え、
時折吹くさわやかな風も感じさせます。
更に孤高さと豊かさ、優しさも。
巨石の重厚感と雲の漂う様との対比も感じられ、
陰陽のバランスをも表しているようです。
そして、床の間の花に関しては、
あるがままの自然を茶室に再現するため、
野に咲いているように花を生けます。
「花は野にあるように」 千利休
このように、床の間に再現される自然は無駄な飾りがなく、
洗練された美しさがあり、人の心に深く染み入ります。
茶道と禅
茶道を通して考えると
禅の精神はとてもシンプルなものであるように感じます。
元々、禅の思想は言葉や文字に頼らない体験重視の思想だそうです。
このため、ただ目の前にある美しさを見て感じたことや
心に残るものが大事なのではないでしょうか。
さきほどまで、禅語についていろいろ主観を述べましたが、
結局のところは、
「白雲抱幽石」を見て、あなたが感じたこと、それが大切。
なのでしょうか。
お茶席に入る時は、まず心を落ち着かせ無の状態にして臨むよう、
先生から教えられました。
お点前の時も所作に集中し、お茶を美味しく楽しんでもらうために
心を尽くすように、とも。
それは瞑想に近い状態かもしれませんね。
お湯の沸いている音、お茶碗を清める水の音、お茶を立てる音など、
静けさと時折感じるささやかな音を聞きながら、
心静かに、主人と客人はその場を体感していくのですから。
一期一会と和敬清寂
どちらも茶道の心得を示す禅語です。
一期一会は「一生に一度の出会い」ということから、
今を共に過ごしている人との出会いを大切に、
再び訪れることの無い今を大事に、ということです。
和敬清寂は主人と客人が互いを敬い、茶会の雰囲気や
お道具などを清浄に保つよう心がけること。
限られた空間で雰囲気を大事にする日本人ならではの
心配りです。
時には雰囲気を壊してしまう出来事が起こるかもしれません。
それでも縁あって今、集い、過ごしている時は一度きり。
そのことに気づき、相手を敬えるようになれたなら、
一度は壊れた雰囲気も元に戻っていくのでしょう。
言うのは簡単ですが、修練が必要ですね。
ただ、そんな時こそ一碗のお茶でしょうか。
喫茶去 「お茶をどうぞ」
美味しい食べ物を頂くと気持ちが満たされますよね。
寒空の下で飲む温かい飲み物は凍りついた体を解かし、
気持ちもほっこりさせます。
同じように心を尽くして出された一碗のお茶も
人の心に染み入ると思うのです。
言葉を交わさずとも、お茶を頂き、味わうことで
互いの気持ちに気づく。
茶室という場に共にいる今に集中し、心静かに時を過ごす。
そうした修練が精神を育てていくのですね。
理想を共にする空間
茶室では皆が平等です。
武士も商人も身分に関係なく、にじり口で頭を下げ、
武士は刀を外して入り、一緒にお茶を楽しみます。
お濃茶は一碗のお茶をみんなで回していただきます。
現実には身分の差があるとしても、
茶室の中だけは皆、平等であること。
これは、占星術でいうところの11ハウス的な
「希望や理想を共にする仲間」に当てはまりそうです。
今から400年以上前の戦国時代に一貫して守り続けた
千利休の強い信念に心打たれます。
そして、それは途絶えることなく今も続いています。
時には茶室という空間で、誰かが知略、謀略を巡らせたかもしれません。
思いを同じくする同志と共に(これも11ハウス的です)。
でも大概は、季節や趣向を愛で、お茶を楽しみたいという共通の思いが
人を集わせたのではないでしょうか。
茶の湯とはただ湯をわかし茶を点てて飲むばかりなる本を知るべし
千利休
生活に活かす禅の思想
茶道を通して得られた禅の思想は、
生活の中でも活かされると思います。
季節を感じ日常に取り入れ、今を生きる自分を体感する。
今のこの時は一度きり。今に集中し、今を生きること。
「毎日、同じことの繰り返しでしかない…。」
こう感じると、日常はその人にとって当たり前で
退屈だと思いがちです。
でも、当たり前でなくなる日はやってきます。
それも突然に。
その時になってようやく、当たり前に埋もれていた幸せに
気づくこともあるでしょう。
今を大切に生きること。
限りある時を感じ、いろいろな出会いを大事に、そして感謝を。
桜の開花が間近だったので、桜色のお茶碗で頂きました。
お菓子ははっさくの砂糖漬けと味噌くるみ餅、
お花はアルストロメリアで自宅にあるアイビーと。
参考文献
渡曾正純・石飛博光「ほっとする禅語70」二玄社
飲茶「史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち」河出書房新社
⇒ 個室の写真など、北海道支部の情報はこちらでご覧ください。
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